終幕と開幕。

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僕は今回、浅松さんのお迎えを事前に断っておいた。久音に勘ぐられるのは避けたかったし、何よりあまり浅松さんに負担をかけるのも申し訳なかった。あの人なら負担とは感じていないかもしれないけれど、僕がそうしたかったのである。見当違いのワガママかもしれないが、そういう事だ。 歩いて天条邸まで向かう。また柵から正門まで長い道のりではあるが、自分の中で仁さんとの会話のシミュレーションが出来る分悪くない距離であった。 実の所、学校から天条邸までの距離そのものはそこまで遠い訳ではない。毎度毎度車で帰るから遠いと思われがちだが、別にそんな事はない。正門から家まで距離があるので問題があることはあるのだが。 だから悩みつつ僕が歩いてると、二十分くらいで着いてしまった。しかもまるでファンタジーのラスボスの部屋の扉が如く、勝手に正門か開きだす。ズゴゴゴゴゴゴと効果音がついても違和感はないだろう。中に入り、また歩く。 歩き出した時は凄く長い距離に見えたというのに、緊張が高まるにつれて一瞬で扉の前に着いてしまった錯覚に陥る。落ち着けと自分に言い聞かせながら、僕は恐る恐るインターホンを押す。最近はいつも勝手に開くのだが、何故か今日は開かなかったため、僕はスーパーウルトラ久しぶりにこの家のインターホンに触れた。
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