終幕と開幕。

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「はい」 「あの、臼井です。天条仁さんとの面談を約束していまして。本日伺わせていただきました」 「存じております。ご案内しますので、中にお入りください」 以前会ったメイド長の声だった。しかし、雰囲気がいつもと違う。何か堅い感じの声色。また、扉を開けて中に入ると、心なしか表情も緊張気味だった。いつもの余裕はない感じが見て取れる。 「お待ちしておりました臼井様。それでは旦那様のいる部屋へとご案内させて頂きます」 そう言いつつ、彼女は僕の荷物を預かって歩き出した。僕は素直にその後を着いて行く。だが、どうにも怪しい。いつもの久音の部屋や食堂、客間などを全てスルーしていき、辿り着いたのは一つの部屋だった。そこには書斎と記されたプレートがあり、会話をするには似つかないような部屋なのは間違いなさそうだ。 その部屋に入ると、仁さんは居ない。ここで話をするから、待っててくれという事なのだろうか? なんて考えていたら、メイド長さんが斜め上の発言と行動をし始めた。 「臼井様、ここから先は他言無用でお願い致します」 厳粛に僕にお願いした後に、彼女は壁を弄り出す。すると一つの棚が横にスライドし始めたではないか!数々のトンデモ展開を体験してきた僕ですら対応できなかった。なんだよこれ漫画の世界か。 また、スライドして見えるようになった壁を触ると、暗証番号を入力するキーボードらしきものまで出てきおった。そこにすんごく長いパスワードを打って、十秒後に床が開く。なんと地下室とおぼしき場所への階段みたいなものが出てきた。えっ、何それは? 「……僕は今日ここで見て聞いて覚えたことを、口外しないと誓います」 「流石臼井様、ご理解が早くて助かりました」
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