終幕と開幕。

40/55
9892人が本棚に入れています
本棚に追加
/686ページ
「彼女は皮肉にもこの天条家の教育によって、立派な知識と人の上に立つカリスマの片鱗を既に保持していました。だからこそ当初のあの性格で、周りに少ないながらも理解者たる人たちが居てくれたのだと思います」 「敵も多かったでしょうが、ここのSPが居る以上表立った行動はできなかったでしょうし、学校内でも……まあ僕のように単騎で喧嘩を売る人間はいないって言ってましたし」 「そんなこんなで僕らは互いを意識していました。久音は僕を憎き敵、僕は久音を面倒臭い奴だと。今思えば周りにいた女子よりも人一倍、僕も久音を意識していたのかもしれません。面倒臭いなんていう負の感情ですがね」 「ここが、始まりでした」 「彼女は段々と僕を認め始め、僕は当時の自分では気付かぬ内に彼女を知人から友人として見るようになり、緩やかに二人の仲は進行していきました。久音はどう考えているかわかりませんが、僕は邦岡が周りの女の子をフり初めたのが転機だと思っています」 「徐々に邦岡争いから脱落していくライバルたちを見て、きっと久音は……自分を見つめ直したんだと考えます。こ……彼の事を好いていた人物は皆一様に焦ったり僕や虎に相談したりしてきましたけど、久音だけは……なんと言うか、落ち着いていましたよ。まるでやるべき事を決めていたかのようでした」
/686ページ

最初のコメントを投稿しよう!