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「……用事って、ウチにでしたの?」
「うん、黙っててゴメン」
「もう、説明してくだされば良かったのに……入りなさい。廊下で話す内容では無いのでしょう?」
「察しが良くて助かるよ」
久音の気遣いのおかげで僕も、後に続いて部屋の中に入る。思えば、久音の私室に入るのも凄く久しぶりだ。ただ前に来た時と違って少し模様替えをしている。
「模様替えしたんだ」
「あら、わかります? 一番目立つ変更点はドレッサーの位置と物を変えてみたのだけれど、どう?」
「う~ん、ドレッサーの存在感が少し静かになったからソファーの色が強調されてる印象。大人しめの色に変えた方がいいんじゃない?」
「ソファーはまだ使えますもの。それに内装の見た目に拘るのは、外の人の目に触れる客間とかだけで充分ですわ」
「ごもっともで」
「でしょう? ふふっ」
「物を大切にするのはいい事だね、ははっ」
軽口を叩きながら、笑い合う。それは僕の僅かながらにあった緊張感を程良くほぐしてくれたのであった。久音の「座ってていいですわ」という一言と共に僕は座り、彼女が備え付けのティーセットを使って紅茶を入れるのを見ている。
「こう言っちゃなんだけど、浅松さん達に頼まないの?あの人らプロじゃん」
「将来的に、お茶も淹れられない女は嫌でしょう?練習しているのです」
「僕はモルモットかい」
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