君が好きなのに

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エレベーターの中で 君が咳をした。久しぶりに地元に帰るとメールしたら、「すぐに行くから。」と、車で三十分もかかる駅まで迎えに来てくれた。 夜景が観たいと君が言ったから、市役所の展望ホールへ行った。 そのエレベーターの中でも君の咳は止まらない。 「それ、僕のせい?」と聞くと、「ううん平気…、でも そうなのかも。」と言った。 ピンクから薄い紫色へのグラデーションがキレイなマフラーに口元まで埋めて、僕を見上げる。 君は、かわいい。展望ホールは三十二階だ。
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