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96時間経過。回復率、100%。
追っ手も、主人の死体を認めるなり引き返していった。
しかし――私には、主人の発した暗号の意味が分からなかった。やはり、暗号ではなかったらしい。
それならば、どんな意味を持った言葉なのだろう? 私には全く分からない。
「…………」
私は、命令がなければ動けない。
命令をくれる主人が死んだので、私は動けない。
しかし、ここでこうしていても事態は変わらない。
ならば、自分で動く以外ないのだろう。
「…………」
組織は、何者も拒まない。
追われたのは主人が初めての様だが、私は今追われていない。
だから――組織へ戻ろう。
私を作った場所ならば、私に新しい命令や、新しい主人を与えて下さる筈だ。
その場合、前の主人からの命令が引きずられている場合もあるので、全ての記憶はリセットされる。
先程頭に書き込んだものも、全て消えてしまうが――別に構わなかった。
私は、主人だった人の亡骸に背を向けて、歩きだした。
――どうか、しあわせに――
一瞬、主人の最期の言葉を思い出して足が止まった。
意味は分からないが――私の中にある何かが、その理解を望んでいた。
「…………」
――考える。
しかし、意味が分からない。
私は、それを理解する様な思考回路を持っていない。
だから……私は理解を諦め、再び歩き始めた。
――街でも組織でも無い方角へ向けて……。
―――――FIN.
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