37.混沌に射すもの。

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はじめから強い人なんて居ない。 強い気持ちってのはね。 何かを思い、 誰かを思う、 それこそが強さなんだよ。 君達が互いに思い合えれば。 「それが  君達一人ひとりの強さなんだ」 にっこりと微笑みながら白衣の医師はまた、グレーの髪をカリカリと掻いた。 強くない俺達。 だけど、それでいい。 強くなれる。 思い合えば、それが強さ。 隣の楝が ずずっとひとつ鼻を啜った。 長い長い緊張から解き放たれたような、 そんな気がした。 俺だけじゃない。 慧里も楝も。 あれからずっと 緊張していたのかもしれない。 強くいなければ、 強くならなければと。 その想いが強すぎて空回る。 息切れ寸前だったのだろう、みんな。 それに気付いたのは慧里で、 救ってくれたのは、センセーだった。 .
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