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「今日シゴト一緒でサ、
帰りがけに行きたいとこあンだって…」
トワクンも連れてくってゆーから
迎えにきた。
運転席に足を滑らせながら車越し、乗ってと言う楝に即され、とりあえず助手席に乗り込む。
なんで俺にはいつも選択肢が無いんだ?
ルームミラーでそんな強引な慧里を一瞥しながらシートベルトをスルリと伸ばし、その手で無意識にポケットにあった携帯を探っていた。
着信を知らせるランプは光っていない。
「今日はヨイチが看てるよ。」
俺の手にある携帯に視線を落とした楝が
その目をすっと逸らせて言った。
いつも意識の何処かに付き纏う葵の影。
さて。キーを回してエンジンをかけたところで楝はぐるっと振り返って後部シートの慧里を小突く。
「何所行きゃいーんだよ、」
なんとっ。
行き先も知らないで引き受けたわけ?
楝は慧里に甘い…。
「んあ~、あぁ…、
とわくんおつかれぇ~」
起き抜けの慧里はなんとも呑気で、
気が抜ける。
そんなに待ったわけでもないだろうに瞬時に夢の世界へ行ける慧里が羨ましい。
「おもてどーり出て、しんごーひだり、」
道案内を彼に任せて、
本当に大丈夫なんだろうか…。
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