37.混沌に射すもの。

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「なぁ、オッサン…」 ふんわりと闇夜に浮かぶオレンジの月のようなまどろみに、寄り添うようなささやかな慧里の呟き。 湯呑の中の茶葉がふらっと揺れた。 ふと、心にもなく口をついて出た言葉のような、だけど、なんだか強い意志を持ったふうにも聴こえる不思議なその声に。 思わず彼の顔を見ると、その瞳の奥が深い深い天涯のように、何かを強く抱いているように見えて。 はっとした。 「…どーして、  こうなっちまったんだろ、」 また、茶葉が揺れた。 どうして。 それは俺らが皆、抱いていた感情で。 俺らが皆、その想いの重さに心を潰されそうになっていた。 そして。 同時にその想いを重石に、自分の中で暴れ狂う感情に必死に蓋をしていたんだ。 その言葉を口にしてしまったら、最後。 全てが流れ出し、溢れた感情に足を掬われ立てなくてってしまう。 そう思っていた。 だから言えなくて。 言えなくて、苦しくて。 だけど本当は、聞きたかった。 ただ唯一。 俺等はそれを、 口にしたかったんだ。ずっと。 ----------どうして? .
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