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「おれたち5人いるんだ。」
だから、だいじょうぶだって思ってた。
ひとりでは弱くても、
5人なら強くいられる。
そう思ってたんだ。
その声はとても弱々しくて、
殆ど感情を揺らすことのない慧里の。
心の中を見た気がした。
強くなりたいのに。
俺がもっと強くなれたら。
リーダーなのに。
ぽつりと落ちるコトバ。
どんな事もあるがままに受け入れる慧里。
そんな慧里を頼もしく思う一方で、本当はどこか遠い人のように感じていた。
びくともしない静かで強靭な精神は、
時に人間らしさを遠ざけて。
彼の前に立つことが
恥ずかしいとさえ思った。
近頃の俺はあまりにも情けなくて。
俺だって、そうありたいのに。
精一杯虚勢を張って強いふり。
彼には到底及ばない自分の、
その仮初の姿。
そんな自分に苛立ちを覚えたし、その苛立ちは矛先を変えて心の中で慧里を責めたりもした。
"何考えてるか、分からないヒト"
歯車が、少しずつ狂い始めていたんだ。
その歪みを、
彼の言葉が癒してゆく。
弱さを曝け出す事で、彼は俺等を、
救ってくれたのだと思った。
彼が俺達を、
ここに連れてきた理由。
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