37.混沌に射すもの。

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「おれたち5人いるんだ。」 だから、だいじょうぶだって思ってた。 ひとりでは弱くても、 5人なら強くいられる。 そう思ってたんだ。 その声はとても弱々しくて、 殆ど感情を揺らすことのない慧里の。 心の中を見た気がした。 強くなりたいのに。 俺がもっと強くなれたら。 リーダーなのに。 ぽつりと落ちるコトバ。 どんな事もあるがままに受け入れる慧里。 そんな慧里を頼もしく思う一方で、本当はどこか遠い人のように感じていた。 びくともしない静かで強靭な精神は、 時に人間らしさを遠ざけて。 彼の前に立つことが 恥ずかしいとさえ思った。 近頃の俺はあまりにも情けなくて。 俺だって、そうありたいのに。 精一杯虚勢を張って強いふり。 彼には到底及ばない自分の、 その仮初の姿。 そんな自分に苛立ちを覚えたし、その苛立ちは矛先を変えて心の中で慧里を責めたりもした。 "何考えてるか、分からないヒト" 歯車が、少しずつ狂い始めていたんだ。 その歪みを、 彼の言葉が癒してゆく。 弱さを曝け出す事で、彼は俺等を、 救ってくれたのだと思った。 彼が俺達を、 ここに連れてきた理由。 .
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