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それぞれに色んな思いを抱きながらも、形だけの式は呆気なく終わってしまった。
涙混じりに交わされる別れの言葉、部活ごとの小さな集まり、吹奏楽部の演奏をBGMに様々な言葉が聞こえてくる。
この日のために用意したのであろうまだ真新しいマジックを渡されて、何人かのクラスメイトから寄せ書きを頼まれた。「お互い卒業おめでとう!」からの言葉が続かなくて、当たり障りのないことを並べる。キュッキュッと響くマジックの音がどこか切なく聞こえた。
それも一段落がつくと、色んなところに小さなグループのかたまりが出来ていく。私はそのどこにも属さずに集まりから離れて桜の木を見ていた。
まだ、芽がほんの少し膨らんだだけの桜。手を伸ばせば触れられる距離にあるのに、途方もなく遠くに見えて私は手を伸ばすことすら出来ずにじっと眺める。
彼に、少しだけ重ねる。
重ねてから苦笑して首を横に振った。
手を伸ばしても触れられる距離になどいなかった。彼は友達という間柄で、一番近くて、一番遠い位置にいたのだから。
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