それから、

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門へと背を向けてゆっくりと足を踏み出すと、後ろの方から駆けてくる足音が聞こえてきた。 一瞬、ほんの一瞬だけ彼じゃないかと期待したけれど、彼はこんなに軽い足音じゃないと確信してまた足を踏み出す。……足音まで、覚えてしまっているのか。それほどまでに近い位置にいたのかと思ったら急に涙腺がじんわりと緩んだ。 「美夏? もう帰っちゃうの? 勇治、まだ校舎の中にいたのに」 声を掛けられてから、さっきの足音が友達のものだったのだと理解して慌てて振り向く。あえて、涙は隠さないままに。不自然じゃないはずだ、今日は卒業式なのだから。 「うん、なんか感傷に浸りすぎちゃうのもなーと思って。勇治とは何だかんだいって、街中でひょっこり会う気もするし」 「ほんと、仲良かったもんねー。男女間の友情なんて信じてなかったけど、二人のおかげで信じられたもん」 涙に気づいていながらも突っ込んだ質問を避けるのは、彼女の瞳もまた真っ赤だからなのかもしれない。
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