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鉛色した空から、まるで無限に湧いてくるかのように止めどなく雨粒が落ちてくる。
「もおーだから梅雨は嫌いなのよ、本当よく雨が降るから…なんで雨って降るのかな。」
私はこの時期に、すっかり相棒として定着した水色の折りたたみ傘を少し持ち上げ空を見上げた。
…雨は微塵も降り止む気配を見せず、ただ静かに地面へと落ちていく。
「そう言えば…」 私はふと、すでに亡くなった母が口癖のように話していた話しを思い出した。
まだ私が小さかった頃のその日も、今日と同じように雨がよく降っていた日だった。私は実家の軒先でゴムボールを抱え、雨が上がるのをじっと待っていた。
「美香ーそんな所にいないで早く家に入りなさいね。」 母が優しく私の名前を呼び家に入るように促している。
「………。」 私はもう数日も降り続いている長雨に、早く止みなさいと叱り付け家に入った。
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