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「雨は嫌い。…だってせっかくのお休みだというのに、外でお友達とボール遊びやおままごととかできないのだもん。」
家に入るなり私は居間に足を投げ出して座り込み、母に不満をぶつける。それがここ数日、私の日課となっていた。
…そんな時、母は決まってこんなことを言ったものだ。
「雨はね、神さまが美香や全ての生き物に、その数を数えてもらいたいと思っているからいつもいつも降らせているのよ。しかも…」
「お母さん、それ昨日も聞いたよ。」 私はもう沢山だと言う顔を作って見せ、母の言葉を遮った。
「その雨の数を数えられたら雲の上にいる神さまに会えるんでしょ?…でもやってみたけど全部は無理よ、速すぎて数えられないもの。」
窓から外の様子を伺いながら私はぶっきらぼうにそう言った。
母はそれを聞いて、クスクスと笑みをこぼしながら
「そうね、お母さんもとてもじゃないけど実際には数えられないわ。…でもそう考えると少しは気も晴れるんじゃない?…雨も悪くはないわ。」
そう言うと母はわざとらしくいち、に、さん、と早口で雨の数を数えだした。
その母の様子がとても愉快で、私もたまらず笑いながら母の横に行き大きな声で一緒に雨粒を数えだした。
「いち、に、さん、…」
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