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それから十数年後、母は病気で亡くなった。その日もやはり雨はシトシトと静かに降っており、夜中になっても降り止むことはなかった。
翌日、私が目を覚まし外を見ると雨はほぼ上がり、わずかにポタポタと落ちているだけだった。
「お母さんが無事に神さまの所に行けるように…私が雨の数を数えるよ、今ならできる気がする。」
「いち、に、さん、…ひにゃく、にひゃくいち……雨が上がった、嘘…私数えられたよお母さん。」 そう思うと昨日から抑えていた感情が溢れ出て、次々と涙が流れてくる。母との思い出が浮かんでは涙で滲み、わずかにぼやけた。
ふと窓の外に目を向けると、そこには今まで見たことのないような大きさの虹が地面と空とを繋ぐようにして架かっていた。
空からは今にも「美香、ありがとう。」と母の優しい言葉が降ってきそうな、そんな清々しい久しぶりの晴れ空が広がっていた。
「ああ、母の言っていたことは本当だったんだ。」私は涙で赤くなった目で、しばらくその虹と青空に見入っていた。
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