序章 決別の刻

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パキパキとメビウスの周囲が絶対零度に包まれる。 それはメビウスを中心として周波状に展開して行く。 降りしきる雨とて例外では無い。 下手をすればここら一体を氷土に変えてしまう程だ。 サルカンはとりあえずの牽制として、小規模な火球を打ち出す。 が、予想通り火球はメビウスに届く前に冷気にあてられ消滅する。 「ちぃっ・・・!」 サルカンとて全くの勝機が無いわけでは無い。 昔書物に伝承程度に印されていたのだが、幻獣というのは強力な【神秘の力】=テレパスを持つ神子が、聖召石という媒介を通すことにより初めてこの世に君臨すると。 当然ながらツァークが神子の力をその身に宿しているとは到底思わない。 つまり 「(だからあのメビウスは完全じゃない。なんらかの衝撃を与えれば存在を空中分解させるはずだ)」 メビウスの周囲は絶対零度に満ちている。 彼女の半径10メートル程度に近づこうものなら一瞬の内に凍り付けにされてアウトだ。 一見完璧に見えるこの絶対零度防御壁だが、サルカンは気付いた。 彼女の真後ろ、人体の頚椎にあたるその一点だけ周囲より凍り付けが浅い弱点を。
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