序章 決別の刻

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あくまでも周囲より零度が低いだけだ。 生半可な攻撃は通用しないことに変わりは無い。 たったそれだけの弱点。 けれども唯一の勝機。 サルカンの持つ劍技は【牙龍劍】。 バスディア家に代々伝わる攻撃力に特化した劍術、すなわち剛の劍。 完全に熟練していないとはいえその威力は並の剣の遥か上を行く。 「【三卦皇龍閃】!」 サルカンが剣を振るうと同時、八つに分かれた擬似的な龍の斬撃がメビウスを襲う。 しかしこれも予想通り、絶対零度という冷気の壁に阻まれて消滅する。 絶対零度の壁は斬撃すらも通さない。 もはや冗談のようなその防御を突き破るには、やはりメビウスの弱点を尽かねばならない。 その時だった。 一際大きな落雷が落下し、一瞬だが世界を白く染める。 「(今だ)」 これみよがしにサルカンは無謀にも【三卦皇龍閃】を前方に放つ。 今度は八頭の龍閃をバラバラにではなく一方向に収束させて。 もしメビウスに人間的な意識があるのならこう思っただろう。 まるで八頭の龍がサルカンの姿を隠すように迫って来る、と。
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