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これまで同様に全ての龍閃は絶対零度の壁に阻まれて消滅する。
しかしここで予期せぬ事態が発生する。
それはサルカン側でなく、メビウス側。
先程までそこにいたサルカンの姿が、無い。
「悪いね」
メビウスの後方、ちょうど頚椎の直線上にサルカンは立っていた。
その右手は鞘に。
彼の剛の剣が唸りを上げる。
「【一卦鏡面刹】!】
鞘から滑るように放たれる青色の閃光。すなわち居合。
一直線に走る斬撃がメビウスの頚椎を取られた。
世界を滅ぼす力を持つ幻獣にこの程度の一撃は蚊にも等しいだろう。
その姿が完全体であるならば。
けれど今は違う。不完全な状態でこの世に現れた幻獣はあまりにも脆かった。
アアァァァァァ!!という女性めいた悲鳴に近い声を上げながらメビウスの徐々にだが体が消滅してゆく。
「ー急いでいるんだ」
サルカンは前方に向けて走り出す。
確かこの先は関所になっていたはずだ。
馬に乗って走るよりかは自分の足で走った方が早い。
関所は思ったよりも近く、数百メートル走るだけでその門が見えた。
その傍らには・・・、ツァークの乗っていた黒馬がいた。
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