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サルカンはこれまで以上に彼の名を叫ぶ。
が、やはり返事は返って来ない。
それどころか、嫌な予感や気配がサルカンの心を煽る。
彼の嗅覚は人並み以上に良いので、その異常をすぐに察知した。
考えたくはないがこれは・・・、大量の血の匂いだ。
まさか、そんな、馬鹿な・・・。
心がざわつく。
最悪のイメージを払拭出来ない。
サルカンは父を殺したツァークを最悪と称した。
けれども違ったのだ。
最低の悪事はまだまだ続く。
今まさにツァークが門兵を斬り伏せているのがそれだ。
「ツァーク・・・」
「まさかメビウスを退けるとはな。まぁ、それぐらいでなければ困るわけだが。わざわざ手を抜いた意味が無い」
謎めいた独り言を呟くツァーク。しかしそんなことはどうでもいい。
もううんざりだ。もう耐えられない。限界だ。嗜虐の限りを尽くすツァークにも、救いを求める自分さえも。
「・・・許さない」
「許してもらおうとも思わない」
落雷が衝突の合図になった。
ピッシャャャン!!という轟音と共に激突する両者。
サルカンの眼に涙は無い。
変わりに天が流しているようだった。
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