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サルカンは壁に背を預けたままツァークと鍔ぜり合いを拮抗する。
しかし力が出ない。持てない。
自分が今まで行って来た行為。それはただ豪勢な食事に付くこと。
その下でどんな努力をしていたツァークも気にせず。
ただ優しい言葉をかけて上辺だけの信頼を得ていたに過ぎない。
そう考えてしまうとツァークが全て正しいと思ってしまう。
サルカンの中の正義が揺らぐ。
「ハアァァァア!!」
鬼のような形相で剣を振るうツァークに対し、サルカンはただ防御に徹するのみ。
そのあまりにも重過ぎる一撃は、ガード越しに背にしていた壁を粉々に砕いた。
「ぐあぁぁぁぁッ!?」
「所詮俺とお前では生きている世界が違う。お前には・・・、俺の道を邪魔する権利すら無い!」
ツァークにとってはそれが決別の証だった。
もう戻らない。
「さっきも言ったが・・・、俺が手を下すまでも無い」
ぞくりと。後方から異様な寒気がサルカンを包む。
それは比喩でもなんでもなく文字通りの意味。
寒気、すなわち冷気。
倒したはずの氷の化身がゆっくりと近付いて来ていることを意味していた。
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