0人が本棚に入れています
本棚に追加
おかしい。
体が動かない。
倒れたままの姿勢で腰を動かそうとしても力が入らない。
ツァークがこれ程までに体力を奪ったか。
いや、自分はこれ程までに非力だったか。
あるいは精神的な問題か。
いずれにしても自分は弱い。当然だと思う。
なぜなら自分は死に物狂いの努力をして来なかったのだから。
「く・・・そ・・・」
一歩一歩メビウスが近付くにつれ、目に見える冷気が体を包む。パキパキと周囲を凍らせる冷気の化け物が、死の宣告を開始する。
「今度こそ終わりだな」
「ツァーク・・・、僕は・・・」
ガチガチと歯が震える。寒さによって体温が奪われ体の自由を失ってゆく。
「俺はこれから虎ノ国へ亡命するわけだが・・・、まぁあの世で後世の行き先でも見守っていてくれ」
「う・・・あ・・・う・・・」
ついにメビウスの絶対零度領域に突入する。それでなくても冷気によって体の半分が動作不可能なのだ、もはや逃げ伸びる術など存在しない。
足が凍り四肢が凍り上半身が凍り。
意識までもが凍り付いた。
「・・・・・・急がねば」
ヴィータを連れ去って黒馬を走らせるツァーク。その先には一体何が待っているのだろうか。
誰も知らない。
最初のコメントを投稿しよう!