一章 終わる信念

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ー目が覚めると寝室にいた。 真っ白な天井。そこにシャンデリアやら豪奢な装飾やらで、貴族社会にいるのだと自覚する。 そう、バスディアの家に生まれた以上この名は捨てられない。名が重荷になったことは多々あるが、決して疎ましいとは思ったことなど無い。 逆だ。 自分はバスディアの名を誇りに思っている。 父ジークリンデのためにも龍ノ国を守っていかなくてはならないのだ。 ・・・父上? おかしい。 どうして自分は父上の顔を思い出せない。 いやそれ以前に、父上に何かとんでもない事態が起きたような。 そうだった、父上は・・・殺されたんだ。 「ツァーク!!」 サルカンはそこでようやく目が覚める。 というより不思議でならなかった。 ツァークに負けてメビウスに凍り付けにされて・・・ここにいる。 どう考えてもつじつまが合わないではないか。 あの絶対零度は本物だったし、全身凍り付けの人間が今こうして五体満足に動けるなんてことは絶対に有り得ない。 あるとしたらこれはまるで・・・ まるでツァークがメビウスの出力を手加減したみたいではないか。 「兄上ェーー!!」 ドバン!!と、勢いよく扉が開かれる。 まだ自分よりも幼い金髪の少年が泣き出しそうな嬉しそうな、よくわからない顔でしがみついている。 この者の名はエルゼ。 バスディア家の末弟だ。
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