一章 終わる信念

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どたどたと気品のかけらも無い動作で駆けて来たエルゼがベッドに飛び込む。 「どっか痛い所とかないか兄上!それよかどうしたんだツァークはヴィータ姉はなぁなぁなぁ!!」 若干10歳の少年の鼻息は荒い。ばふんばふんとベッドを荒らす様は、本当に心配しているのかどうかさえ怪しい。 「ここは、屋敷・・・なのか?でも一体どうして」 ここが自らの自室であることは間違いない。しかし状況が状況故にサルカンの頭は混乱していた。 「その質問には私が答えよう」 そう言うのは扉に背を預けながら立つバスディア家の長男、ザイザークだ。 年齢は二十歳で、背もサルカンよりかなり高い。 「状況をようやく把握しお前より数分遅れて奴を置いかけたのだが、すでに奴の姿は無く、変わりに関所で倒れているお前を見かけたというわけだ。思ったより外傷が無くて安心したぞ」 そう言うザイザークにサルカンは強烈な違和感を覚える。 自分は全身凍り付けにされたはずだ。なのに外傷が無かったとはどういうことか。 考えられるとすればそれは・・・・・・ 「病み上がりで悪いが母上がお呼びだ。すぐに今後の方針を決めるぞ」
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