一章 終わる信念

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ヴィリアンもまた冷静だった。その気品漂う独特の言葉遣いがそれに拍車をかけている。 夫が殺されたというのに・・・・・・いや、その態度こそが上に立つ者の資格なのかもしれない。 いちいち悲しみにくれていては国など守れない。 そう暗に言われている気がした。 けれど 「お前には【飛龍騎士団】を用いて各地方の防衛ラインを築いてもらうとする。あとサルカ」 「いい加減にしろよ母上!!なんだその態度!!父上が殺されて悲しくともなんともないのかよ!!」 沈黙を破ったのはエルゼだった。まだ幼い少年に国を統べる者の気持ちを理解するのは早過ぎた。 「エルゼ・・・」 「ザイ兄もそうだ!!国?戦争?そんなのオレには関係ない!それ以前にもっとすることがあるんじゃないのかこのー・・・」 「エルゼ!!!!」 暴走するエルゼを止めたのはサルカンだった。大声を張り上げ声だけでエルゼを牽制する。 「黙っていろ。これは全て僕の責任だ・・・」 「そうだの。全ての元凶はあの薄汚い鼠にある・・・が、その元凶を保護してきたのはお前の責任でもある。だから私はあの時言ったのだ、そんな鼠は捨てて来いと」 「けれど僕は捨てなかった。以後10年に渡ってそれを擁護していた・・・。だからこの件は僕に任せて下さい」 「自らのすべき事はわかっているかの?」 「勿論。ーーツァークを殺す」
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