序章 決別の刻

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始まりの日は酷い天気だった。 雨が肌を打ち付けるように振り、雷はかなり近い所に落雷する。 豪雨。 それは今に始まった混乱を表しているかのようだ。 「待て!ツァーク!!」 先行している黒い馬に乗った友の名を叫ぶ。 違う、とサルカンは心の中で否定した。 あいつは友だった男だ。かつての友。今は違う。 今は・・・そう、敵だ。忌まわしき宿敵なのだ。 その後もサルカンは何回も何回も旧友の名を叫び続けた。が、かつての友も応えるどころか振り向きもしない。 ただ、今は気を失っているツァークの右腕に抱えられた妹が、馬の反動で上下に揺れているだけだ。 金の髪はバルディア家であるなによりの証。その長い髪が地面スレスレの所を行ったり来たりしている。今すぐにでもずり落ちてしまいそうで後ろから見ていてとても危なかしく思う。 「ヴィータ!!聞こえているか、返事をしろ!」 ツァークへの弾糾は無駄だと悟り、妹であるヴィータに必死に声を掛ける。・・・がこちらも反応が無い。 無理もない。 若干14歳であるヴィータには、目の前で 親が殺される惨殺シーンは刺激が強過ぎた。 そう。 かつての友ツァークは父を、バルディア家当主を殺したのだ。
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