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入学式から二ヶ月が経ち、高校生活にもこの通学路にもようやく慣れてきた。並木道の桜は散ってしまったが、それ以外は二ヶ月前と何も変わらない。
揃いの制服を身に付けた少女たちが向かうのは、緩やかな坂の上に建つ学び舎。
いつもと同じ登校風景。
そう、いつもどおりなのだ。当たり前のように存在する物の怪たちも。
目の前を横切った浅黒い小鬼の姿に、斉木真花(さいき・さなか)は思わず足を止めた。小型犬ほどのサイズの小鬼は、枯れ枝のような細っこい手足で軽やかに地を駆けていく。身体の造りが人間と似ているだけに、余計に気味が悪いと真花は感じる。
小鬼が去った後、ぼんやり立ち尽くしていた真花の肩を誰かがトンと叩いた。
振り向くと、クラスメイトの中村樹(なかむら・いつき)の爽やかな笑顔がそこにあった。
「真花、おはよ」
ショートヘアでボーイッシュな樹は、朗らかな声で真花に話しかける。樹は今の学校では真花のただ一人の友人だ。
「おはよう、樹ちゃん」
「まーた固まってたでしょ。物の怪の何がそんなに怖いんだか」
樹の表情は呆れ半分、からかい半分、といった様相。
「しょうがないじゃない、ダメなものはダメなんだから……」
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