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あれから八年も経ったと思うと、時の流れる速さには驚いてしまう。
俺があの村に行かなくなって、もうそれほど時間が経ってしまうとは…… 。
「おいタケ! お前休みの間どうするの?」
ミンミンと欝陶しく鳴くアブラゼミの声よりも大声で、大学の友人の工藤は僕に話しかけてくる。
「一人旅するわぁ。と言ってもじいさんの所の田舎だけど」
「へぇー、なんでまた急に?」
あまり興味なさそうに、工藤は聞いてくる。
「親友の墓参りさ。そろそろ行かなきゃならないと思っていたしね」
「そっか。じゃあお前はキャンセルな?」
「は? 何が?」
意味が解らない……何の事だ?
「サークルの合宿」
「いや聞いてないぞ?」
「今決めたし。そして今頓挫した」
「ツッコミ所が多いが、とりあえず他のやつには聞いて見たのか?」
一応こいつは我がオカルト研の、部長をやっている。
まぁオカルトとは名ばかりでただの飲みサークルだから、行動力のある奴が部長となるのだ。
「いやぁ。野郎連中はノリは良いが、女連中はお前居ないと参加悪いのよ」
「たまたまだろ。まぁ、やりたきゃやりゃあ良いじゃん」
「解ってないなぁ。お前女から評判いいよ?」
「そんなん知るか!」
工藤と軽口を言っていると、講義の時間が近付いている事に気がつく。
「んじゃ、俺行くわ」
っと工藤は去り、俺も講義へと向かった。
その後の一週間は何事もなく(夏休み前のサークルの飲み会で、数人がぶったおれ介抱する羽目になったが……)進んで行った。
大学の夏休みが始まり、二、三日すると俺は旅支度を始めた。
「とりあえず、Gパンとシャツ10枚くらいあれば何とかなるか」
荷造りを終えて、一息着くと不意にインターホンが鳴る。
--ピンポーン
「はーい!」
--ガチャリ
俺はマンションのドアを開ける。
「神居さま宛の郵便です」
「あっご苦労様です」
配達員から、封筒を貰うと何か違和感を感じた。
今まで、わざわざインターホンなんか鳴らしてたっけ?
まぁ良いか……。
俺は部屋に戻り、封筒の中身を確認した。
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