-一人旅-

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封筒の中には、一枚のカセットテープが入っていた。 送り主を見ると、切手はあるが書いていない。 「なんだこりゃ? 今時カセットテープだなんて……」 そういえば……押し入れに、古いラジカセが有った筈。 「引っ張り出して見るか……」 普段は使わない下段の、押し入れから埃を被ったラジカセを取り出すと送られて来たテープを再生してみた。 「ハイレタハイレタ……キャハハハ……ジャマスルナ……ジャマスルナ」 --ドンッ 不気味な音に、びっくりして俺はラジカセを蹴っ飛ばしてしまった。 「うわぁ! なんだよこれ……不気味過ぎるだろ」 なんだよこれ……悪戯か? 悪戯? まてよ。これなんか聞き覚えが……。 「あ! そうか!」 これはトウマのやつか、って事は犯人はけーちゃんじゃないか……。 あいつの墓参りに行くとは、言ってあったから大方懐かしむのが半分。悪戯が半分で送って来たのだろう。 まったく人騒がせな……。 犯人が解った事で、驚いた事に気恥ずかしさが込み上げ、俺は頭を掻いた。 一応は形見の品だ。 壊れてないか心配になり、ラジカセを確認する。 ……。 有り得ない。 ラジカセの蓋は閉じていた。 なのに……。 テープがない。 「は? 何がどうなってるの?」 部屋を捜すがどこにも見当たらない。 いよいよ頭が可笑しくなりそうだ……。 封筒すら消えている事に、気付きさらにパニックになる。 これではどうにもならないので横になり、落ち着くのを待った。 心臓がバクバクと鳴る。 数分もすると落ち着き、夢だったと無理矢理納得した。 恐らく昔を懐かしんでいた所に、夢を見たのだろう。 そうとしか思えなかった。
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