-一人旅-

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それから数日後、俺は父の田舎、I県のK地方にある村へと向かった。 観光開発や都市開発とは無縁な農村である。 大学生とは言え、二十歳を向かえ三年となれば、それなりに単位に余裕がある。 俺は長い休みの半分程を、この農村で過ごすつもりだ。 俺は、叔父夫妻が居るがどうにも苦手だし、祖父母も他界している事を理由に、近くの民宿にでも泊まるつもりで居た。 だが叔母に電話で話すと思った以上に歓迎され、結局滞在中は部屋を一室貸して頂く運びとなった。 「突然、押しかけて来てすいません……」 「なぁに、気にしないのぉ! それに昔は、毎年来てたでしょう?」 叔母さんは豪快に笑うと、冷たいお茶を運んで来てくれた。 新幹線、電車、バスを乗り継ぎやっとの思いでたどり着くと、叔母は居間に案内してくれたのだった。 冷たいお茶を飲みながら、世間話に興じる事にした。 叔父、叔母の息子のシンジが大学から殆ど顔を見せない事、叔父さんが盆栽を趣味に始めた等、他愛のない話しをしていると、叔父が帰って来た。 「おぅ! タケでねぇか? まぁゆっくりしてけや」 俺は叔父に挨拶をする。 「お久しぶりです。ご無沙汰してしまい申し訳ないです」 「まぁ仕方ないだろう。あんな事がありゃあなぁ」 そこまでいうと、叔母が口を挟む。 「あんた!」 叔父は済まなそうな顔に変わったので、俺は急いで取り繕う。 「大丈夫ですよ。もうふっ切れましたし、気にしないで下さい」 「ホントにごめんねぇ。この人、でりかしぃってもんが無いんだよ」 ははは……。と皆笑ってしまった。 叔母の口からそんな単語が出て来るとは露程も思いもしなかった。
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