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これが美しい世界だ。
世界はニューイーストのみであり、ここは美しく正しい世界なのだ。
醜い物を廃除した世界。
完璧なる楽園だ。
僕はこの世界に抗うつもりはない。
平穏な世界を生きる事に、僕は退屈しながらも、これが最良なのだと理解していた。
「おい貴様! 聞いてんのか!」
物想いに耽っていると、急に現実へと戻される。
目の前には銃を持った隻腕の大男が、銃口を僕に向けながら怒鳴っていた。
「ん? 何を?」
男は片腕で器用にタバコを吸いながら、いらいらを隠さずに更に怒鳴る。
「部屋の隅に固まっていろって言ったんだ! 別にお前らを殺す事に抵抗はない。後は解るな?」
僕は何時もの生活を続けていた筈だ。
何故銃を突き付けられるような事に、なったのだろうか?
部屋の隅に向かいながら、僕は考えた。
朝に学校に行き。
HRを聞き。
授業を受ける。
そして三時限の時に男が数名、教室に雪崩混んで来た。
件のテロリスト達だろう。市民IDがない事を利用してニューイーストに忍び込み、学校を占拠したようだ。
何故に学校を占拠したのかは明白で、街の中心部から遠く、警備が薄く、人が多いからだろう。
犯行の理由は解らないが、立て篭もるならこれ程の条件はない様に思う。
自分はと言えば人質らしく、助けを待てば良い。
彼等も反抗を見せなければ、わざわざ人質を殺そうとは思わないだろう。
15分もすると、窓の外には大量の軍が配備されていた。
交渉の段階なのだろう。
包囲はあるが、特に動く様子はない。
周りのクラスメイト達は、安堵の表情を隠さない。
誰もが、このまま解放される事を疑いもしなかった。
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