帰りたい

5/5
前へ
/24ページ
次へ
お風呂を沸かす。 私は思ったよりのんびり屋らしい。 少ししか怖いと思わない。 服を脱ぐ。それらを全て洗濯機につっこむ。 「…、はぁ…」 身体にシャワーを浴びせてから、湯に浸かる。 気味の悪い静けさ。 お父さんが観るテレビの音も、お母さんが食器洗いをする音も、祐太が携帯ゲーム機で騒ぐ声も、いつもの音は無い。 ポチャン。 ポチャン、ポタポタ。 私は体育座りになり、俯いた。 なるほど、私は怖いのか。 涙は止まらない。 しゃっくりあげる程に泣く。 でも私が言うのは、やっぱりコレ。 「帰りたい…帰り、たい、よぉ…帰りたい、帰りた……帰りたい…」 『口癖になってるよ』と注意してくれる家族はいない。 私はお湯の中に潜った。 ぶくぶく。 「帰りたい」 酸素が逃げるばかりで、声にならない。 頭と身体、顔を洗い風呂を出た。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加