1,音と温度

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「それにしても何だ、話と言うのは。はっきりと申せ、気になるではないか。」 「へっ?……あ、うん。そういやそうだったね、ごめん」 へらりと作った笑い顔は、現実に目を向けようとしていなかった。 話が噛み合っていないのもその所為だろう。 「……いや、何だかね、ちょっと旦那と話がしたかっただけなんだ。こうやってダラダラ~っと。」 「……話など何時でもしておるではないか」 旦那は変なものを見つけたかの様な顔をしている。 無理も無いな……自分でも良く分からないんだし。 「……何だ、たったそれだけか?」 「あはは、まぁね」 さながら馬鹿であると自分を笑った。 「………今日は空が濁っておる。この冴えない気分はその所為なのだろうか」 「…かもねぇ、俺様も丁度そんな感じ。」 俺は何気なく、薄暗く曇っている空を見上げた。 只雨が降り続けるばかりで、何かある訳でも無いのに。 「……佐助、濡れる。」 「…ん、あぁ、そうだね」 そう言っても、佐助は濡れることも気にせずに只空を見つめ続けた。 「聞いておるのかっ」 「……はは、ごめんごめん、ちょっとボーっとしてた」 「只でさえ冷たい冬の雨に好き好んで濡れるなど、お前の気が知れんっ」
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