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「それにしても何だ、話と言うのは。はっきりと申せ、気になるではないか。」
「へっ?……あ、うん。そういやそうだったね、ごめん」
へらりと作った笑い顔は、現実に目を向けようとしていなかった。
話が噛み合っていないのもその所為だろう。
「……いや、何だかね、ちょっと旦那と話がしたかっただけなんだ。こうやってダラダラ~っと。」
「……話など何時でもしておるではないか」
旦那は変なものを見つけたかの様な顔をしている。
無理も無いな……自分でも良く分からないんだし。
「……何だ、たったそれだけか?」
「あはは、まぁね」
さながら馬鹿であると自分を笑った。
「………今日は空が濁っておる。この冴えない気分はその所為なのだろうか」
「…かもねぇ、俺様も丁度そんな感じ。」
俺は何気なく、薄暗く曇っている空を見上げた。
只雨が降り続けるばかりで、何かある訳でも無いのに。
「……佐助、濡れる。」
「…ん、あぁ、そうだね」
そう言っても、佐助は濡れることも気にせずに只空を見つめ続けた。
「聞いておるのかっ」
「……はは、ごめんごめん、ちょっとボーっとしてた」
「只でさえ冷たい冬の雨に好き好んで濡れるなど、お前の気が知れんっ」
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