1,音と温度

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「……何でだろうね、凄く冷たいんだ。」 「当たり前だろう、それだけ雨に濡れれば冷たいのが普通だ」 旦那は益々俺を怪訝そうに見つめている。 「…あ、そうだ、旦那。」 「………何だ」 今思えば、あの行動はきっと可笑しかったと思う。 「左手……かして?」 何言ってんだろう、俺。 「……左手…、か?」 「うん」 そう微笑んでから少し間が空いて、旦那は素直に左手を差し出してくれた。 「握っていい?」 「……何だ、突然」 「駄目?」 「い、嫌ではないが……」 「だったら良いよね」 半ば強制的に同意を押し切ると、旦那は少し苦々しい顔をした。 だけど確かに嫌がっている様子では無かったので、俺は会話を進めた。 別に人肌が恋しいって訳ではないけど。 でも。 「触らせて欲しいんだ。」
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