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「…………、」
旦那は目を丸くして俺を見つめてきた。
そりゃこんな事言われれば誰だって驚くよな。
そう思って気付いた時は、旦那はこちらが黙っているのに不安を感じたのかどうしたのか、少し上目遣いで俺を見上げていた。
「……お前が人に自分から触れたがるだなんて、珍しい、な。」
視線が重なった事で安心したのか、旦那は暫くの沈黙から、やっと口を開いた。
飛び出してきた言葉は、どこか優しさを含んでいた。
「……そう?俺様は結構スキンシップは大切にしてる方だと思うんだけど。」
「俺には、そうは見えない」
「……え、……」
「お前は人に触れる時も、触れられた時も、どこか楽しそうには見えない。……それどころか、嫌がっている様にさえ見える」
自分が思っていたものと予想外の返答が返ってきて、俺は少し動揺した。
「…旦那からだと、俺様はそう見えるの?」
「少なくとも俺にはそう見える。お前は誰かに触れられた時は、何時も肩に力が入っているからな。」
良く見てるなぁ……って、そうじゃない。
確かに俺は自分以外の誰かに触られるのは少し苦手だ。けれど何故それを旦那が知っているのかは分からなかった。
旦那はそんな俺を無視して、突然和らぐような笑顔でこう続けた。
「だから、お前が自分の意志で誰かに触れようとした事が嬉しかったのだ」
「………!」
あぁ、また、か。
旦那は誰かの身に良いことが起こると、まるで自分の事の様に喜ぶ。
この人は昔から何一つ変わらない。
俺に対しても、俺以上に喜ぶものだから、何だか妙にむず痒い気分になったものだった。
「……はは、……旦那には参りましたよ……。」
自慢げに笑う旦那にそれ以上ものは言えず、まぁ旦那が喜んでくれるならそれで良いやと、俺はそう思うようにした。
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