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「はい、出席取るぞ~」
新学期の色に包まれた灰色の校舎。青司はずんずんと出席を取る声が重なる教室を次々と通り過ぎて行く。
三年五組。
青司はその教室のドアを開けた。ガタン!とドアが乱暴な音を立てて柱にぶつかる。
しん、と静まった教室の教壇には青司の担任教師が立っていた。とくに驚いた風もなく、出席簿にペンを突き立てる。
「明津青司」
「…」
しゅっ、と出席簿にペンを走らせる音だけがやけに大きく聞こえた。
後輩たちばかりの教室─その中には不機嫌そうな五嶌らもいた─を見渡せば、窓側の一番後ろの席が空いている。
青司は周りの視線も気にせず、そこにどかりと腰かけた。
ふと自分より斜め三つ前の席の伏せて眠っている女子生徒が目についた。
ブレザーの襟から、見覚えのある白いフードが覗いている。
「……………………」
「今日の日程確認するぞー」
とりあえず、さっさと卒業してしまおう。青司は迫り来る憂鬱にさいなまれ、机に突っ伏した。大人たちに文句を言われ、更には後輩と同じ学年となると、いい加減青司のプライドも傷付くものだ。
それに高卒資格はあったほうが上手く世の中渡って行けるからと、叔父夫婦は中退させる気は無いらしかった。
そのためにはなるべく停学沙汰にならないようにしなければ。
青司は窓の外を眺めながら、浅かった睡眠時間を取り戻すように目を閉じた。
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