一話 奇妙な彼女

11/47
前へ
/292ページ
次へ
* ふと青司は目が覚めた。 昼休みのチャイムが鳴ったのだ。青司はのそりと起き上がり、ちらほらと生徒がまばらな教室を出ようとした。 ふと、あの白いパーカーを着た女子の座っていた席に目が行った。 机は備忘録のような落書きだらけだ。 ティラノサウルスのようなモンスターや、目の無い羽の生えた奇妙な白いモンスター、二本脚で立つ猫。その猫は吹き出しで「新作発売だニャ!」と叫んでいる。 その他にはスペルの所々間違えた英文がつらつらと並べられており、パンクバンドやロックバンドの名前が書かれていた。 その中には自分が好きなバンドもあってなんとなく親近感が湧いたが、途中でそんなことを思っている自分が馬鹿らしくなってさっさと教室を出た。 一階に降り、正面昇降口方向のに進めば存在する、カウンター式の購買部。いつもは昼休みになると購買部に群がる生徒でごった返すのだが…。 ────しまった、寝過ごした。 青司は購買部の前に立ち、チーズピザパンが売り切れているのを見て眉間に皺を刻んだ。 購買で売り残っているパンはイチゴジャムパンだけだった。 ────チーズピザパン好きなんだが。甘いパンは好きじゃないんだが。 他のパンも売り切れで、青司は仕方無くイチゴジャムパンと牛乳と板ガムを買った後、部室へ向かうために一階廊下の突き当たりにある短い非常階段を降りる。この方が近いのだ。
/292ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加