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窓の外のやかましい雀のさえずりに、意識が浮遊するような眠りから目が覚める。青司はいつも眠りが浅い。
視力0.05の青司の見る世界はいつもぼんやりと靄がかかったようで、どうしても気分が悪くなる。
畳の上に置いたベッドから起き上がり、青司はだぶだぶのスウェットの裾を引きずりながら襖を開けた。
焼き鮭のにおいがする。
すっきりしない頭のまま、青司は階段を降りた。
古い叔父の家は、廊下がいつもきいきい軋み、裸足で歩くときゅっきゅっと鳴く。
叔父夫妻は、青司の寝起きをいつもそれで確認した。
─おはよう。ごはんは?
叔父の声が台所からした。後ろめたさが背中に這い寄ってきて、追い払うようにぶっきらぼうに、
「おはよう。食うよ」
そう言って風呂場の方へ向かい、洗面所に入る。
鏡に映る寝惚け眼。頬を走った涎の痕も目脂も眠気とともにばしゃばしゃと冷水で洗い流す。先程より頭はすっきりした気がした。
洗面台の棚を開け、ストックしているコンタクトレンズが入ったケースを取り出し、両目に付ける。ぱっと視界がはっきりし、ようやく頭も覚醒するようだった。
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