一話 奇妙な彼女

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爽やかな空が頭上にほんの少しだけ覗く薄暗い路地裏で、散々五嶌らをこらしめたあと青司は五嶌にひと蹴りし、言った。 「ガセネタ言おうもんなら次は手加減しねえぞ」 五嶌は悔しさと痛みに顔を歪め、舌打ちをする。 「…フン」 青司はその場を後にした。近場に停めていた自転車に乗り、学校へと向かう。 停学明けのせっかくの清々しい気分は一転、青司の苛々ゲージを赤色に染めつつあった。 * カメラのシャッター音が朝の空気を切る。 高い脚立の上に登り、体育館裏の桜の木の幹に跨がる、上制服に下三年生ジャージ姿でパーカーのフードを被った生徒は青い携帯を片手にひたすら撮影をしていた。 その被写体には、はやにえにあった小鳥の肉が付いたままの脚が刺さった枝から覗く、桜の若い芽だった。 「モズでもいんのかな…」 生徒は幹にしがみつきながら色々な角度から撮影する。通常はやにえはモズがする。モズの亜種が行ったりもするが、林の少ない町にモズがおりるのだろうか。 角度を変えるために腕を伸ばした。 画面が日光により見えなくなる。 「あ」 「うっわ!?」
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