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「モズって鳥、この辺で見かけたりしませんでした?」
「…モズ?」
「あそこに、小鳥の脚が枝に刺さってたんス。たぶんスズメの脚。
あれはモズ科が行うはやにえっていう行為なんスけど、林が近くにあるわけでもないのにここにあるんスよ」
彼女は携帯を再び撮影モードに切り替え、被写体を探しだした。
「知らねえな」
「そーっスかぁ…」
「……じゃあな」
青司は半ば彼女から逃げるように部室の方へと向かった。
ああ、朝から嫌な連中に絡まれている。
それらに絡め取られないように、どうにか程々に掻い潜ってすり抜けていけたら、と思うが、青司はどうにも身体が先に動いてしまう。
部室の南京錠の鍵の存在をポケットの中で感じながら、深く乱暴なため息をついた。
その場に取り残された彼女は膝についた土を払うと、ほぼ無意識に青司の後ろ姿を被写体に携帯をかざしていた。
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