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もちろん行く先は、魚市場の奥にある船着き場だった。
来たこともないはずの場所で迷いもなくいきなり走り出した私を、驚き、しかし急いで家族達は追いかけてきた。
魚市場の中も目もくれず走った。
後ろで家族が叫び呼ぶ声がする。
『間に合え』
船着き場に私は着いた。
目の前に見えるのは、少し大柄な少し汚い男性の後ろ姿。
その先に、見えた。
おかっぱの少女が。
『危ない!助けて!』
私は思い切り声を張り上げながら、男性に突進した。
男性は声に驚き、後ろから突っ込まれた衝動で手に持っていた物を落とし、よろめいた。
『なんだなんだ』
と、船乗り達が集まりだし、後ろから駆けつけた家族にも囲まれ、
男性は慌てて逃げ出したが、船乗り達によって取り押さえられた。
『くそ』
悪態をついた男性は、船乗りがニュースで見たと言った。
連続殺人犯だった。
私は息を荒く、だが確認するように少女を見た。
服は…血もついてない。
どうやら生きているようだ。
『お姉ちゃん……ありがとう』
少女が泣きそうな顔でこちらを見て呟いた。
その声に違和感を感じた。
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