旅館

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旅館

船着き場を離れ、歩いて10分ほどの距離に少し大きな、平屋建てのような建物が見えてきた。 『古い建物だけどよ、中はしっかりしてっからよ』 黒いオジサンは私達の荷物を荷台に乗せて運んでくれていた。 『車出せなくて悪かったなぁ』 運が悪く、昨日からエンジンの調子がおかしいとかで、私達は歩いて移動していた。 ただ、私はこの綺麗な海と、青々と生い茂る森のような木々達の匂いを楽しんでいた。 旅館までは急な坂もなく、文句をつけるなら真夏の暑さだけだ。 『喉渇いたなぁ』 ふと妹が汗をタオルで拭きながら呟いた。 『ついたら美味しいジュースでもだしちょるけんの』 黒いオジサンには、聞こえていたらしく、妹のほうを向いて微笑んだので、妹は少し恥ずかしそうに『ありがとうございます』と呟いた。
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