旅館

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『立派な建物ですね』 父は今日泊まる旅館の玄関を入ったところで、出迎えてくれた黒いオジサンの奥さんに言った。 『ありがとうございますぅ。』 奥さんは優しそうな雰囲気の人で、白い割烹着を着て出迎えてくれた。 『暑かったでしょ?冷たい飲み物すぐお持ちしますね』 そういいながら、黒いオジサンと二人で手分けして、私達の荷物を持ってくれた。 『今日のお客さんは高橋さん達だけなんよ』 ゆっくりしてねと私達に優しく微笑みかけて、奥さんは部屋まで案内してくれた。 旅館の中は純和風といった雰囲気で、部屋は全てふすまと畳の和室らしい。 廊下も焦げ茶色をした板が敷き詰められたものだが、とても綺麗に蛍光灯の光を反射している。 歩く度に小さくギシギシと音を立てる廊下に、私と妹は目を合わせ小さく『お~』と言った。 外見はだいぶ古そうな建物だったが、中はとても綺麗にされており、外とのギャップがすごかった。 ただ、トイレだけは洋風のウォッシュレットらしい。
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