第零章 -プロローグ-

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どこか慣れない家の階段を降り、一階に下りる。 朝の清々しい風に乗せて、母が作る朝食の匂いが流れてくる。 …いつも通りの日常の始まり。 そんな事を考えていると、朝食の準備が整ったと母に伝えられ、テーブルに向かうのだった。 テーブルに向かいあって朝食。 父の姿が見えないが、仕事に行ったのだろうか。 …なんだろう、聞いてはいけない気がする。 仕事に行ったんだ、そうだということにしておこう。 そう、自己完結していると。 「そうそう、お隣のオーキド博士が貴方を呼んでたわよ」 と、食べ物を咀嚼しながら母が言う。 行儀が悪いと突っ込んでやろうかと思ったが。 「……は?」 それより先に突っ込むべき事がある。 今、自分を誰が呼んでいると言った? 箸から、掴んでいたおかずがポトリと皿に落ちる。 …今、母は何と言った? オーキド博士? それって確かポケ… …なわけあるか。 これはあれか、今流行りのドッキリか。 騙されてたまるか。 そう思ったのだが。 「何、どうしたのよ?」 そう尋ねてくる母の表情。 ヤバい。これは本気だ。 「…母さん、馬鹿げた質問かもしれないが」 「何よ」 「ここ、なんて街?」 「何、まだ寝ぼけてるの?」 まったくもう、といった感じで母は溜息をつきながら。 「マサラタウン、でしょ?」 としっかりなさい、と付け足しながら衝撃の事実を告げた。
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