第一章・里帰り

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  季節は12月。 北国の澄んだ空に、ひらひらと雪が舞い降りる。 「ぶえっくしゅ」 色気のないクシャミが教室内に響いた。 「佳奈、風邪ー?」 クラスメイトの美里(ミサト)が登校して早々、佳奈の席へやってきた。 佳奈はフーンッと鼻をかみながら頷く。 「昨日、予備校の帰りにブラブラしてたら冷えちゃったみたいでさぁ」 「ブラブラって、一人で?」 「……友達と」 と『嘘』をついて、佳奈はもう一度鼻をかむ。 友人の美里はさして気にするでもなく、話題を変えた。 「そういえば、私 佳奈と同じ予備校に行く事になったんだよー」 「え、そうなの!? やったね」 「うん。来週から通うから、わからない事あったら教えてね」 「まかせといて」 夏から通っていた先輩の佳奈がニコッと微笑む。と同時にチャイムが鳴った。  
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