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「へいへーい。どちらさん?」
騒々しい音の割には存外落ち着いた笑顔で、ドアの向こうに立っていたのは紛れもない深紅だった。そのさっぱりとした表情から、どうやら体調不良ではないのであろうことが窺える。
最初二、三十秒成輝は動けずにいた。
家族も同然であるこの男に久しぶりに会えたこと、それだけでも無意識に気が緩んでしまうというのに、彼が至って健康そうであるのを見ると、緊張は一気に解け思考回路が安堵故に麻痺してしまったのだ。
そのため、いつもの深紅らしからぬ軽すぎる出迎えに、成輝はさして大きな疑問は抱かなかった。
彼に会えた安堵感と、なぜ、どうしてという疑問の方がずっと大きかったからだ。
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