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「何言ってるの深紅、僕が分からないの?」
聞けば罰の悪そうな顔をして視線を泳がせる。まるで彼と成輝の間に虚言でもあるかのように。
今の深紅は、何かがおかしい。どうやら本当にただの無断欠席ではなかったようだ。
しばらくすると、彼はぎこちない笑みを浮かべてドアを大きく開けた。
「分からねえわけねえじゃん、俺たちの仲だろ? ま、上がれよ」
言われて、疑問を抱きながらも成輝はおとなしく玄関へ上がることにした。靴を脱ぎ、リビングへと向かった深紅の背を追うも――彼の頭は混沌としていた。
深紅は成輝を知らないと言った。けれど、次の瞬間には俺たちの仲だと言った。
混乱する頭の中で、けれども深紅が虚実を使い分けようとしていることは何となく感じた。
何が嘘で、何が本当なのかは全く見当がつかないけれど。
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