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今日も深紅は欠席のようだ。
教室には彼の机だけがぽつんと空いていることが成輝に無性に虚しさを感じさせる。
彼の性格だから教科書を学校へ置いていくことは決してない。だから机の中は空っぽ、机上も落書き一つない。
そこから深紅がいた形跡はどこにもなくて、成輝にはただそこに空いた席が一つあるだけのようにも感じてしまった。
けれどもクラスメートから「今日も乙休み?」と聞かれると、ああ確かに彼はここにいたんだ、と安心感を得るのだった。
きっと自分がこんなにも情けないのは、彼が今まで学校を欠席するなんて滅多にしなかったのと、いつも一緒に居すぎたせいだ‥―――成輝は少しでも明るく考えられるように言い訳をした。そうでもしないと不安でいっぱいになりそうだった。
それでも授業開始のチャイムは無情にも鳴る。
成輝は仕方なく席につき、一枚壁を挟んだように遠く聞こえる先生の声を聞き流しながら、最後に深紅と会った日のことを思い出していた。
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