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樹海の中心部。以前迅竜が巣を構えていた場所に辿り着く。
「この先に、お前の探している者はいる…。」
異様な気配を感じる。
「…気をつけろ。中で私の部下が数名重傷を負わされた。皆よく修練されたギルドナイトだったのだが。」
そう言うとアーリィは壁を背に座り込む。
「私はしばらくここで連絡係を待つ。お前達だけで行け。」
私は頷き、アーリィに背を向ける。
「アーリィ、ありがとう。」
アーリィはまた苦笑する。
「礼を言われる事でもない。」
私はアーリィを見ず微笑し、巣へと入って行く。その後ろにちょこちょこと猫もついてくる。
――。
「…私は酷な事をさせているな。」
リンが去った後、アーリィは呟いた。
「…お怪我の手当てを致します。」
どこからともなく、忍装束を纏った人物達が現れた。アーリィの部下だろうか。
アーリィが背中の槍を置き、鎧を脱ぐと、おびただしい血痕と大きな切り傷がある。
「…件の男は?」
「はい。近くに潜伏している様です。しかし…」
「…捕らえろ。一刻も早く」
「はっ…」
数名の部下が消える。
「死んでくれるなよ…リン…」
木々の隙間から月明かりが差し込む――。
既に辺りは夜の闇に包まれていた。
巣の中から飛竜の咆哮が木霊する。
アーリィは美しく真円を描く月をただ静かに見上げていた。
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