その8 ヤクソク

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樹海の中心部。以前迅竜が巣を構えていた場所に辿り着く。 「この先に、お前の探している者はいる…。」 異様な気配を感じる。 「…気をつけろ。中で私の部下が数名重傷を負わされた。皆よく修練されたギルドナイトだったのだが。」 そう言うとアーリィは壁を背に座り込む。 「私はしばらくここで連絡係を待つ。お前達だけで行け。」 私は頷き、アーリィに背を向ける。 「アーリィ、ありがとう。」 アーリィはまた苦笑する。 「礼を言われる事でもない。」 私はアーリィを見ず微笑し、巣へと入って行く。その後ろにちょこちょこと猫もついてくる。 ――。 「…私は酷な事をさせているな。」 リンが去った後、アーリィは呟いた。 「…お怪我の手当てを致します。」 どこからともなく、忍装束を纏った人物達が現れた。アーリィの部下だろうか。 アーリィが背中の槍を置き、鎧を脱ぐと、おびただしい血痕と大きな切り傷がある。 「…件の男は?」 「はい。近くに潜伏している様です。しかし…」 「…捕らえろ。一刻も早く」 「はっ…」 数名の部下が消える。 「死んでくれるなよ…リン…」 木々の隙間から月明かりが差し込む――。 既に辺りは夜の闇に包まれていた。 巣の中から飛竜の咆哮が木霊する。 アーリィは美しく真円を描く月をただ静かに見上げていた。
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