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巣に入ると、人より少し大きい黒い影が見えた。
背筋に寒気が走る。
赤黒く伸びた尻尾に、また黒い翼。赤黒い角、紅の鱗…。
加えて黒い体毛に覆われ、腕には刃の様な小さな翼がある。
人間より少し大きいくらいか…。あんな飛竜見た事がない。
しかし、私が感じている禍々しい威圧感は…。
背中のディスティアーレが脈動する。ヤツの放つ禍々しいそれに反応したか…。
「あれが何だか分からないけど、この感じは…紅龍…ミラバルカン…?」
災厄と呼ばれ、近隣の村々を焼き尽くし、数多のハンターやギルドナイト達を死に追いやった、三柱の龍の内が一柱。
一年程前、私が死に物狂いで狩った。その証として私の背にこのディスティアーレがある…。
にわかには信じられない。でも、眼前に確かにいるモノからは姿形は微妙に違えども、紅龍の気配がする。
ならばそれは確かに紅龍に連なる何かなんだろう。それに…今はこんな奴に油を売ってる場合じゃない。
しかし素通りは出来そうもない。
ならば…狩って進む…?
「ご、ご主人…ボクは猫だからはっきりわかんニャいけど…あ、あいつからナルさんの臭いがするニャ……あ、あれニャ!」
そう言って猫が指差した先には…
ナルの…衣服…?ヤツの体に引っかかって…
何…?何故?どうして?
「ああああああ!ナルを!っどうしたああああああぁぁあ!」
頭に一気に血が登る。アーレを素早く構え、弾丸を雨の様に撃つ。
ヤツは弾丸を避けようと動くが、放たれた弾丸は一発たりとも外れない。
「ごごご、ご主人、落ち着いてニャァァァ!」
一発も避けられない事に諦めたのか、ヤツが動きを止める。
次の瞬間、弾丸がヤツの皮膚に弾かれる。
「硬化…!?」
紅龍は自らの皮膚を鋼よりも硬くさせ、攻撃を防ぐ。
失念していた――。
ヤツがこちらに突進する体勢に入る。
マズい…!
そう思った瞬間、爆発が起きヤツが怯む。
「ご主人!今の内にあっちに一度逃げるニャ!ここは狭過ぎニャ!」
猫の爆弾か!こいつ、たまにはやるじゃない。帰ったらカジキマグロでも何でも好きなだけ食べさせてあげるわ!
私は煙玉を投げ、茂みに逃げ込む。
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