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獣道を駆け抜ける私と猫。
(…つい頭に血が上っちゃったよ。猫のおかげで助かるとは思わなかったけど。)
ガシッと猫を掴み、両手のひらで猫の頬をパシッと叩き、ポイッと投げる。
「よっし、落ち着いたぁ!」
猫はくるりと着地し、
「そういう時は自分のを叩くもんニャ!」
笑顔でスルー。
「さて、ものすごい追いかけてきてる訳だけど…」
こいつの相手をしている間にもナルがどうなっているか分からない。
だが、逃げ切れそうでもない…。
獣道を抜け、開けた場所に出る。
選択肢は一つ…なら…
さっさと倒してナルを探す!
気持ちを切り替える。
…早くナルを探しに行きたいんだから…。
振り向きながらアーレを構える。
「邪魔を…しないでよおおおおお!!」
硬化した皮膚に有効と思われる、拡散弾を放つ。
反動で仰け反るが、複数の強力な爆発がヤツを襲う。
「や、やったニャ!」
……以前見た紅龍に比べやけに小型とはいえこの程度で倒れるはずがない。
「!」
反射的に猫を蹴飛ばす。
「ニャギャ!酷いニャー!」
その瞬間、鋭い斬撃が私の胸部を掠める。
ミラルーツスキンが斜めにパックリと裂かれるが、幸い身体には到達しなかった。
「ニャニャ…ご主人…」
すまなさそうな眼で猫が見てくる。
ルーツスキンはすぐに自らについた切り傷を再生し始める。
危なかった。もしアレと同格の、三龍素材のこの防具でなければ、今の一撃で真っ二つになっていた。
「久しぶりに冷や汗なんか流しちゃうよ…。全く。」
冗談ぽく言うが、笑顔が作れない。
だが、ヤツを倒さなければ…
「ナル…」
私は静かに眼を閉じた…。
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